(1)メンバー
Uさん(L)、Nさん、U海(記録)
(2)コースタイム
2014年1月24日(金)
東京発19:00 小淵沢道の駅着22:00
2014年1月25日(土)
美濃戸口発5:55
赤岳鉱泉着7:30/発8:00−石尊稜への分岐(赤い橋)8:10
下部岩壁取付着9:20/9:30登攀開始(草付逆層スラブ→潅木帯/Ⅲ+)
雪稜帯スタカット&コンテ(300m/Ⅲ+)
上部岩壁 取付(凹角岩–ナイフリッジ–最後の頂上直下ガリー 30m/Ⅲ)
石尊峰登頂12:25
(地蔵尾根経由)石尊稜入口分岐14:18
赤岳鉱泉着14:30
美濃戸口着16:05
振り返ってみれば10時間行動。初心者を連れた3人パーティにも関わらず取付から稜線まで3時間弱というかなりのスピードでした。
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(3)記録
私のバリエーションデビューは厳冬期の八ヶ岳、横岳西壁となりました。もともとバリエーションがしたくてアルムに入ったのだが、いきなり実現してしまった。しかも厳冬期の八ヶ岳です。
今回は石尊稜と赤岳主稜を1泊2日で行く予定。都内から中央道で小淵沢の道の駅までゆき、そこでテントを張る。気温も下がらず快適にお酒が飲めます。
朝は4時起きで美濃戸口を目指す。Uさんの四駆は雪道にも強く急坂をバリバリ登っていきます。ギアの選定など手際よく準備をし、薄暗い中、赤岳鉱泉までノンストップで登る。まだこの時間は登山者も少ない。私はいきなりザックの腰ベルトのバックルが壊れてキスリング状態なのが少々辛い。どうも荷物も入れ過ぎのようだ。
赤岳鉱泉で軽食を取り、アイゼン、ハーネス、ギアを装着。背負う荷物が急に軽くなる。目の前には横岳の岩壁が雄大にそびえ、気が引き締まる。
(赤岳鉱泉にて準備。既に緊張しています)
行者小屋方面へ10分程歩くと(雪に埋まった)赤い橋があり、そこから縦走路を左に外れて石尊稜方面へトレースがついている。さすがは人気のルートだ。取付まで1時間ほど。意外に登り、徐々に斜度が急になる。詰めの斜面は過去に雪崩れたことがあるらしく、緊張が走る。ただし、今は雪は締まっているようだ。危ないときは左手の小さな尾根から上がるのだろう。
取付までの最後のトラバースは既に断崖絶壁で気を抜けない。(=既に怖い)
(雪崩も怖い)
1P目は狭いテラスから。ボルトを支点にして登攀開始。いよいよ始まる。武者震いがする。Uさんがトップ、Nさんがビレイ。自分は仕事が無いので写真係。下から見あげると想像以上に壁面が立っている。果たして自分に登れるのだろうか。。。
しかし自分は2番手。お荷物にはならないぞと意を決して登り始める。ダブルロープでUさん、私、Nさんの順番。
そういえばアイゼンで岩を登るの初めてだと急に思い出す。前爪で岩に立つという知識はあったが、怖くて前爪で乗れない。無意識に横爪でホールドに立っている。Nさんが後ろから「ナンデモアリで頑張って!」と励ましてくれ、とにかくがむしゃらに登る。
しかしここは岩が非常に脆い。ボロボロホールドが取れ冷や汗が噴出。
「何が合っても登るぞ!」などとブツブツ言いながら、岩をつかみ、草を握る。ロープが岩で屈折して張りづらいのと、何度もアイゼンでロープを踏みそうになる。腰に付けたピッケルもブラブラして気になるし、なんだか落ち着いて登れない。
やがて脆い下部岩壁を越え、草付に到達すると、思い出したかのようにバイルを手にした。そういえば、某大手登山用具店の無表情なオニイサンが「雪面に刺して、ストラップに全体重を掛けるのです」と言っていたのを思い出し、思い切り雪面に刺して見る。
「ザクッ!」想像していた以上に草付きに安定して食いついてくれる。おお、感動。そして、きちんと刺さると面白いように体重を載せられる。気分はカマキリですな。
右手にバイル、左手は雪面をつかむという感じでどんどん登れる。
2P目。灌木混じりの雪稜を登る。バイルを覚えたので気持ちが若干落ち着く。雪や草付きにはよく刺さるが、岩では上手くピックを引っ掻けなくてはいけないなど、なんとなくコツを掴んでくる。
やがて緩やかな雪稜に出ると、300-400mほどをスタカット及びコンテで登る。Uさんはどんどん高度を稼いでゆく。高度もあり息が切れる。振り返ると物凄い高度感。
(・・・を、ビレイするアホ面)
そして生まれて初めて経験するナイフリッジ!慎重に歩くが、私の体重(計90kg近く)だと踏み跡を崩してしまう。Nさんすみません。落ちたら一発アウトなのでかなり慎重に歩く。雪稜は急斜面、緩斜面と変化に富みなんとも飽きさせないルートだ。
(良い天気で市街が見渡せる)
やがて頭上に覆いかぶさるように上部岩壁が視界に入ってくる。こんな厳つい岩を登れるのだろうかと、不安がよぎる。しかし登ってみると、上部岩壁はガバが多くて登りやすい。どうやら核心部は下部岩壁の取付だったようだ。
上部岩壁を越えると大きく石尊峰が見えてくる。しかしここでロープトラブル発生。ロープが団子になり、解消するのに10分ほど要した。アタマはパニックで必死だった。初めてのバリエーションでこんなトラブルにあうとは。
岩壁を抜け、草付帯から短いながら急な雪のルンゼをコンテでゼイゼイ言いながら登っていると、徐々に斜度が緩くなり、広い稜線(石尊峰山頂)に出た。
引っ張りあげて貰ったようなものとはいえ、生まれて初めてのバリエーションを制したのだ。
お二人にお礼をいい、山頂でしばし景色を楽しみ、記念写真を撮る。稜線上はけっこう風があるものの、天気もよく、眼前の赤岳から、遠くの富士山、南北アルプスが明瞭に見渡せる。
こうした眺めも冬山登山のご褒美。
稜線をいく人はほとんどいない。小休止ののち、地蔵尾根を下りるが意外に急斜面で少々ビビる。落ちたら止まらなそうだ。途中、美男美女のカップルと会い、一緒に降りる。女性の方はなんでも雪崩で何ヵ所も骨折したそうだが、リハビリで赤岳にハイキングにきたとのこと。って、冬の赤岳はハイキングにくる山じゃないぞ!
(地蔵尾根から見えた中山尾根。中段にビレイ中のクライマーが見える)
太陽にかさがかかり始め、明日は天気が悪そうなので赤岳主稜は中止することを決め、赤岳鉱泉での休憩もそこそこにどんどんくだってしまう。結果として日帰りで行くことができました。
16時には美濃戸口につき、八ヶ岳PAで食事をしたら一目散に東京に向かって車を走らせました。濃密な1日でした。
(美濃戸口の鹿)
(4)感想
個人的には非常に達成感の強い山行でした。
結果として取付から山頂まで3時間弱、ロープトラブル等が無ければもう10分は早かったと思いますが、標準コースタイムが4時間なので、かなり早く登れたように思います。Uさん、Nさんありがとうございました。
次は、隣に見えた中山尾根や赤岳主稜、大同心にトライしたいと思ったものでした。
(5)反省点
・アイゼン登攀の練習不足
・ロープの取り扱い
・軽量化
以上